小説

そのとき西郷が、やおら立った【本の言葉】

 そのとき西郷が、やおら立った。「長州藩のお歴々も、薩摩の者も、よう見てくだされ。オイの余興はこれでごわす」と股間をもそもそたくしあげて一物をとりだし、ローソクの灯で毛をジリジリと焼きはじめた。・・・(竜馬がゆく3 司馬遼太郎 新潮文庫)


 坂本竜馬の斡旋で、薩摩と長州が討幕同盟を結んだという話は、あまりにも有名であるが、薩長は、それまでは仇敵といってもよい間柄であった。とはいえ、両者は幕末において突出した尊王の雄藩。竜馬以前にも互いに接触を図り、親和に努めていたようである。

 上のエピソードは、薩長の志士によるある懇親会からのもの。酒が入り、場が荒れたところで、それを収めるために行った西郷隆盛の奇策。陰毛を焼かれては、血の気もひいたことだろうが、このシーンをされに突っ込んで考えると、、、

 西郷は象皮病を病んで、陰嚢が腫れ上がっていたという話がある。維新の風雲期の入り口あたるこの頃に、症状がどのようなものであったかは不明であるが、陰毛を焼くという奇行以上に一同が驚愕したのは、巨大化した西郷の陰嚢だったのかも知れない。

 曰く「西郷はデッカイ奴だ」と。



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銘酒「剣菱」で知られた店である【本の言葉】

先斗町に「よしや」という料亭がある。銘酒「剣菱」で知られた店である。竜馬にとってはじめての店だが、かねがねその酒をのんでみたいと思っていた。・・・
(竜馬がゆく3 司馬遼太郎 新潮文庫)



 「竜馬がゆく」など、
幕末を舞台にした小説を読んで楽しいのは、京都の街に関する記述が多いこと。神社仏閣はもちろん、通りやお店、それらは150年以 上経った今でも現存するものが多い。小説を読みながら、竜馬らが駆けた道を頭の中でトレースするのは、京都の側に棲む行者にとって楽しい作業である。

 なお、先斗町「よしや」は、現在でも
高い評価の名店。是非一度「剣菱」を飲みに行ってみたいと思う。

 ところで、「先斗」とはポルトガル語の「先」を意味する「ポント」に由来するものだとか。であれば、その名は戦国時代あたりに遡るのだろう。

 そうであれば「よしや」という店の名前も興味深い。「よしや=ヨシュア」は、聖書(キリスト教)に登場する人物の名前であり、キリスト教は戦国時代にポルトガル人がもたらしたものであるからだ。あるいは、と想像する次第である。

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こんな腐れ藩、ないほうがましじゃ【本の言葉】

「わした土佐藩の郷士にゃァ、藩はないと思いさだめたぞ。こんな腐れ藩、ないほうがましじゃ。一朝、天下に事あらば、藩のためにも起たぬ。幕府のためにも起たぬ。京の天子のもとに集まってやる」
池内蔵太は武市半平太の勤王論の心酔者である。・・・


 現政府、為政者への鬱積した憤懣が、より上位にいる、むしろ抽象的ともいえる存在「超越的なもの」への憧憬と忠誠に結びつくという社会現象は、幕末に限ったものではなく、又、洋の東西を問わないものではなかろうか。幾分前のタイ国における政変時にも、王が担ぎ出される、そんなシーンがあったことを思い出す。

 わが国における若者を中心とした現社会からの孤立感や空虚さは、どのような超越者と結託するのだろうか。幕末の観念的かつ情緒的な勤王論者は、膨大な血の雨を降らせた。

 観念論的妄想、とりわけ昭和の軍閥を憎み、恨んだ司馬遼太郎は、合理的攘夷論者、坂本竜馬の物語を若者達にこそ読んでもらいたいのではなかろうか。

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竜馬は苦笑した【本の言葉】

「讃岐男に阿波女、伊予の学者に、土佐の高知は鬼ざむらい、でしょ」「そうそう。それにしても土佐は鬼侍とは分が悪い」竜馬は苦笑した。・・・(竜馬がゆく2・司馬遼太郎著 文春文庫)


 江戸時代における四国四州それぞれの気質をいう言葉のようだが、讃岐男とは商人の甲斐性をいい、都市的な雰囲気があり、それに対して土佐は鬼侍ということで、
四国山地で隔てられたそれぞれの地域には、強い独自性が自然と培われたということか。

 讃岐や阿波の気質がむしろ畿内に近いというのであれば、それは陸路よりむしろ海路が主要な流通であったこの時代の特徴を示しているということだろう。禁 制が緩み、それぞれのお国柄をしょった若者達が集った
幕末の江戸や京都は、さながら人種のるつぼ、そんな雰囲気だったのだろうか。

 それにしても、
「阿波女(あわおんな)」とは、一種の性的魅力をいったものとの説明が付されていたが、今日でも泡姫(あわひめ)という言葉があるのだから、これは語呂が良すぎる。

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むろん、竜馬の知らない男もきた【本の言葉】

「だから、江戸や京都を見てきたという者が帰国すると、話をききにどっと集ま る。むろん、竜馬の知らない男もきた。ひどいのになると、幡多郡の宿毛や中村といった、高知城下まで三日も四日もかかる山奥から旅装束でやってくる男もいた。」(竜馬がゆく1・司馬遼太郎著 文春文庫)

 「入り鉄砲に出女」という言葉が示すとおり、江戸幕府は内に向かっては人々の移動、交流を制限し、外に向かっては「鎖国」を以って国是とした。その甲斐あってか、250年の太平を実現したわけであるが、
「我慢」は、一方で人の好奇心をくすぐるものである。

 人類の本性であろう「知りたい」という衝動は、当時の日本人にあっても強烈なもので、それは「半開きの鎖国」(オランダ、清、朝鮮とは国交があった)という
「チラリズム」に由来したのかも知れない。


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竜馬は暗い顔をした。ひとごとではなかった【本の言葉】

「竜馬は暗い顔をした。ひとごとではなかった。土佐藩ほどの上下の身分のやかましい藩はない。たとえば、郷士の分際の者がいかに英才のもちぬしであろうとも、藩政に参加する身分にはとうていなれない。」(竜馬がゆく1・司馬遼太郎著 文春文庫)

 司馬遼太郎が強調しすぎるきらいがあるが、「尊王攘夷」と一方には「近代化」と多面的な側面を持つ明治維新であるが、
「平等への強烈な渇望」というものも、その推進力の一つであったのだろう。坂本龍馬は身分解放の闘士でもあったということか。


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ゲイ用語について【メイキング・オブ・OL三国志演義】

 ただいま『OL三国志演義』は第二部。いわゆる三国志演義に沿えば、漢王朝の腐敗と群雄の登場のあたりです。いわゆる反董卓連合軍、っていうトコロ。

 漢室の腐敗を描くためには宦官の存在を忘れてはいけませんが、その悪しき茶坊主どもの代表格が十常寺の一人、張譲。OL三国志演義では『十条寺譲(じゅうじょうじ・ゆずる)』という秘書室長として登場させています。

 宦官は去勢した人ですので、それにちなんで十条寺室長の設定は、ゲイ。ということでゲイ諸兄のことを調べる必要があって、馴染みのウィキさんにあたって、みると『ゲイ用語』なる楽しげなメニューにつきあたりました。そこで発見したものが以下の記述。

【アンティー子】
    大阪キタの堂山町にあるオールナイト喫茶の名称にちなみ、この店を利用しているゲイをアンティー子、この店に行くことをアンティー子するという。

うーーん、堂山にそんな喫茶店があったのか。深夜に行ってみたいアンティー。でもエライめに合うかもしれないアンティー。 アンティー子を想い、朝から気もそぞろ。OL三国志が俺の心に思わぬ波紋を広げよったわい!

 本編、ボチボチ書いてます。

第一部の物語はこちらです   【働く女性が群雄割拠】OL三国志演義第一部(校正版)

第二部も含めて連載はこちら → 【いよいよ暴君登場】OL三国志演義

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OL三国志演義【第二部】第二幕第三段つづき

~雁田憲和は旧交を温めるも、玄田徳子は意気消沈す~
Sangosuki030  
 座敷の障子が開くと夏木姉妹が入ってきた。その後ろについて、数人の見慣れない男たちが宴席に入ってくる。夏木姉妹は、早や男子達の調達に成功した模様 だ。

 

が、その男子達の雰囲気は、ライトなヤクザ風のルックスで、この席には、若干の違和感がある。男子達は、夏木姉妹に促され、十条寺室長の方に向かっ た。この宴会の代表格に挨拶をする意図だろう。

 その中に一人。「ちわーす」と大きな声を上げ、愛想をしていた男がいぶかしげに玄田徳子を見つめた。「私の顔に何かついてまして?」と玄田徳子がお上品キャラをパロってやろうとした時、その男は驚きの声を上げた。

 「あれ!玄田?、、玄田ちゃんやん!」

 玄田徳子は男の姿をまじまじと見た。縦じまのダブルのスーツに、ど派手なネクタイ。なんだか吉本新喜劇の衣装のようだ。小脇に抱えたルイ・ビィトンのセカンドバッグは、まるで小道具のよう。持ち主の雰囲気と相まってパチもん(*)の匂いがする。

 *パチモン 偽物を大阪ではこう呼ぶ。イエモンは九十年代に人気を博したロックバンド、イエローモンキーの略称。

 が、その顔には見覚えがある。人間というものは、どういう訳か、人の顔を忘れない。たとえ、時間と共にその形状が変化していようとも。

 「、、、え!カ・リ・タ、、、雁田クン!?ガンダーラぁ!?」

 さっきまで、大のご満悦であった玄田徳子の顔から、サッと血の気がひいた。

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大阪の深層・キタとミナミの対立【OL三国志演義】

 OL三国志演義のメイキング。「大阪の深層、キタ・ミナミの対立」のおハナシを続けます。キタの住民はミナミの住民を「ガラが悪い、ヤンキー」、ミナミの住民はキタの住民を「モッサイ、ええカッコしい」とそれぞれ思っているのではないか、そんな反感が互いにあるように思われます。

 女子のファッションにも違いがあり、キタのショップとミナミのショップでは商品の色彩に違いがあるように思います。ミナミの方が概して派手、そんな印象があります。

 そういう点からして北河内京阪沿線の街は、微妙です(もちろん主観)。門真、寝屋川、枚方などの北河内は、大阪市より北部にあり、地理的には無論「キタ」となるのですが、その町並みは下町風で、人情にもヤンキー礼賛の気風が見受けられるように思います。

 

中河内からの影響もあるのかも知れません。そして河内と言えばやはり河内弁と「河内のオッサンの唄」。HIPHOPを思わせるようなそのライムは前衛的でさえありました。北河内の人々が「 おー、よう来たのワレ♪」と言ってるのを聞いたことはありませんが、「河内」という言葉のインパクトは大阪人には甚大なものがあります。

 

キタに位置しながら、ミナミ的な印象を醸す地域。それが北河内ではないでしょうか。『OL三国志演義』の主人公、玄田徳子とその幼馴染、雁田憲和は、その北河内で、ヤンキーブーム華やかなりし80年代初頭に思春期を送ったという設定にしております。

 そして玄田のライバル、操猛美は「キタ」の高級住宅地、阪急宝塚線に住んでいるという設定。大阪はキタにおける沿線と学区(高校受験における推奨校枠)の優越感、劣等感についてはまたの機会に記します。

 余談ながら今回のおハナシ。キタとミナミどちらが良いとか正しいとかいうことではありません。40年近く大阪に暮らしている私の印象をベースに書かせてもらいました。

第一部の物語はこちらです   【働く女性が群雄割拠】OL三国志演義第一部(校正版)

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大阪の深層、キタ・ミナミの対立【OL三国志演義】

Photo  現在、『OL三国志演義』には、簡雍(字は憲和)という劉備の配下の武将をモデルにした雁田憲和(あだ名はガンダーラ)というキャラクターを登場させています。

 

簡雍のエピソードをベースにして、彼は玄田徳子の幼馴染で陽気な元ヤンキーという設定にしています。そして北河内出身ということにしています。利用する電車は京阪電車

 北河内を語る前に、こちら大阪に伝統的にあるキタ・ミナミの対立といういわば南北問題のようなものについてハナシておく必要があります。(といっても、何が問題なのかは不明ですが。。。)

 キタとは狭義には、梅田から本町界隈を指し、広義には、この梅田、本町界隈を終着点とする電車に乗る人々の生活域。一方、ミナミとは、狭義には難波から天王寺を界隈を指し、この難波、天王寺を終着点とする電車に乗る人々の生活域。

 

大阪の路線図を参照する

 因みに大阪のユースカルチャーの発信地、心斎橋は一般的にはミナミと呼ばれるように思いますが、私は独自に「キタとミナミ。二つの異文明の出会う場、ナニワのバザール」的なものと理解をしています。

 少し長くなりそうです。キタとミナミの対立のハナシ(といってもたいしたことではないのですが)と、北河内の微妙さは引き続き次回にお話します。(つづく)

 

第一部の物語はこちらです   【働く女性が群雄割拠】OL三国志演義第一部(校正版)

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