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OL三国志演義【忍び寄る黄色い影第二段】

~ OL三国志演義 第一部【イエロースカーフの乱】 第二幕 【忍び寄る黄色い影・第二段】

Sangosuki005   「要するに、酔ってる時って、男はルックスよりもノリがいい方を選ぶんじゃない?」

 なるほど、と玄田徳子は関長子の言葉に感心した。関長子は、どうも男性の心情に通じているようだ。暗めの照明にジャズが流れる雰囲気のいい店。この頃増えはじめた、ニュー居酒屋と呼ばれるものだろう、この店を予約してくれたのも関長子だった。

 金曜日の今夜、張本翼の同期会が男子らのキャンセルによって流会となっており、その仇を討つという張本翼の強引な主張によって、玄田徳子、関長子、張本翼の義姉妹は飲んでいる。

  「え、長子のネエサン!それ、ワタシが可愛くないっていう意味ぃ~?」

 張本翼は、砂ずりの串で関長子を差しながら、やや甘えた口調で不満そうに言った。

  「いやいや、そうじゃなくて、酔っ払ってみんなを明るくするから、ハリモトが男らにウケてるのかかなぁと、思ったのよ。」

  「なーるほど!確かにそうかも。そう、ウチはゼッタイ暗い酒は飲まへんねん。ところで、徳子のネエサンはどうなん?やっぱり、飲んだらモテるんやろ?」 

 張本翼は焼酎を呷(あお)って、空になった素焼きのグラスをテーブルに置くと、斜め下から睨むような仕草をして、玄田徳子に水を向けた。どうやら既にからみ酒のようである。

  玄田徳子は、生中(生ビール中ジョッキのこと。筆者註)を一口飲んで、はや一次会から泥酔しつつある義妹・張本翼に閉口しつつ、その質問に答えた。

  「モテるって全然!ワタシはみんなで飲むのが好きやから、いつも結構大人数やし、みんなでワイワイしゃべってるからぁ、そんなモテっるとかいう雰囲気ちゃうし。」

 「いやいや、徳子の姉上はモテそうですよ、、、なんというか、包容力があって聞き上手。」

と、関長子が玄田徳子を持ち上げた。さっきから日本酒を水のように飲んでいる彼女の好みは、池田の銘酒、呉春。呉春があるか、ないか。関長子の宴席選びには、欠く事の出来ないポイントである。

 義理姉妹の契り結んで以来、毎週のように集うようになった三人であるが、とはいえ、未だ数回の宴席を重ねたに過ぎない。そのため今でも自己紹介的な会話が多く、モテ話はその一環なのである。

 そもそも、モテ話なぞというのは、いわゆるホラ話の一つであって、その内容の事実関係を突き詰めさえしなければ、当り障りの無い酒席に格好のテーマと言える。玄田徳子と関長子は、この罪の無い話をそれなりに楽しんでいる。いま一人はかなり真剣な様子だが。

 そういえば、いつぞやの結婚式の二次会で、どう見ても女性に縁の薄そうな男子らのモテ話を聞かされたことがあった。彼らは、口説いているつもりのようだったが、こちらとしては、心証を損ねるのもどうかと思って、終始愛想笑いをしながら、その自慢話を聞いていた。

 ところがそのモテ話は、「こいつがモテんねん」「なんて言いながら、こっちが全部もっていくんですよ~」といった調子の持ち上げ合いで、話には具体性が無く、これが延々と続いたので、それは相当の苦痛であった。

 女は時間を空費している、玄田徳子の軽く酔った頭には、退屈な思い出とともに、そんな考えが浮かんでいた。

 モテ話に少し嫌気が差して、玄田徳子は話題を変えよう思った。今日は女子三人の飲み会。モテ話に終始していては、かなり寒いものがあるし。そこで、玄田徳子はこの間から少し気になっていることを関長子に聞いてみることにした。

  「ねえ、話変わるけどサア、長子チャンがこの間、いってたイエローの話さあ、、」

  「イエロー・スカーフですね、派遣の太平スタッフの。」

  「そうそう、スカーフ。あの娘(コ。関西では女性が女性を呼ぶ際にこの表現を用いる。筆者註)ら、けっこう、ブイブイ言わしてるンやて?」

 関長子は受け皿用の升に溢れた呉春を丁寧にガラスのお猪口に移しながら、少し微笑んで言った。

  「そう、ブイブイ。イエロー・スカーフは会話が巧みで、飲み会に参加した男子全員を必ず午前様にさせるようですよ。イエロー・スカーフに洗脳されて、次の日から黄色いネクタイしはじめた男子もおるとか。フフッ。」

  「なにそれ、宗教やん、ハハッ。」

  「な、派遣の娘(コ)ってハデやん?」

 と、張本翼が敵愾心をあらわにして、玄田徳子と関長子の話に割って入った。コバルトブルーのスーツに虎の顔が付いたパンプスという、大阪ミナミ独特のセンスを体現した張本の本日のコーディネートも、相当に派手なのだが、彼女が言いたかったことは、必ずしも身なりだけの話ではなかった。

  「ウチの会社だけじゃなくて、取引先とか業者とかとも結構、飲みに行ってるらしいで」

  「ふぅん、でも飲みに行くのは付き合いとか、色々あるんと違うの。別に悪いことないん違うかなあ」

 当年とって28歳になる玄田徳子は、いよいよ本腰を入れて可能性と選択肢を広げねばと先日決意した矢先だったので、張本翼の主張に軽く反論しておく必要があった。玄田徳子もイエロー・スカーフに負けじと頑張りたいのである。

 「徳子のネエサン~別に悪いとか言ってるンじゃなくてぇ、ハデやな~って、ちょっと思っただけで、、、」

 実は玄田徳子も張本翼の憤りがよく分かる。ある種の縄張り意識みたいなものが、イエロースカーフへの漠とした反感の正体であることは、認めたくはない本心なのである。

「、、、え!あれ、あれ!」

 と張本翼が抑えたものながらも、驚いた声をあげた。

 「ほら、あっちの席、トイレの横の、、、イエローがおる、、、一緒におるのウチの同期やん!」

 張本翼が手羽先の足で指した向こうには、黄色いスカーフを巻いた6人の女性と、若い男子サラリーマン6人の、楽しげに語らう姿があった。

(次回につづく)

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