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オシム就任によせて~映画「アンダーグラウンド」ご紹介【行者の聴いた観た読んだ】

Underground  オシム、最近この名前を頻繁に聞く。ジーコの後任として、日本代表監督に就任したイビチャ・オシム氏は、優れた戦術と選手育成能力・チーム運営に長けたJリーグはもちろんのこと、世界的にも名の通ったフットボールの監督である。ところでオシム監督はバルカン半島の、現在はボスニア・ヘルツェゴビナという国家となった、かつてのユーゴスラビア連邦の出身であるのだが、オシム監督への関心からユーゴへの興味が湧いている諸兄も少なからずおられるのではなかろうか。

 この行者、実はクロアチア代表のファンであり、バルカン半島の政治情勢には一定の関心を払ってきた者である。それは、92年の欧州選手権予選で、R・バッジォ率いるイタリア代表を新興国だったクロアチアが撃破したことと、どうもその国は凄まじい内戦の中【民族浄化】というある種のジェノサイドの渦中にあるという報道に衝撃を受けたことに始まるのだが、今回の【行者の観た聴いた読んだ】では、ユーゴを知りたい諸兄に映画「アンダーグラウンド」をご紹介します。

 この「アンダーグラウンド」は1995年に公開された鬼才E・クストリッツァの作品で、クロアチア人とセルビア人の二人の男の友情と裏切りを通して、ユーゴの近・現代史をカリカチュアして描いたものです。(クロアチア人の主人公のモデルはきっとクロアチア人であったユーゴの父、チトー大統領でしょう。)旧共産圏、東欧というとあるいは日本人は暗いという印象を持っているかも知れませんが、少なくともこの映画に出てくる人々は熱く、明るく、激しくエネルギッシュです。この映画を観れば東欧への、少なくともバルカン半島への印象が一新されるでしょう。

 また、G・ブレコビッチのテーマ音楽も素晴らしい。ロック、パンクと東欧の伝統音楽を融合させた狂想曲が映画に独特のリズム、疾走感を与えます。特に印象的な旋律はロマ(ジプシー)からのエッセンスか。国家、民族を巡って血で血を洗う抗争を続けるバルカンの人々の物語に、国家を持たない民族の伝統音楽がそのコントラストを際立たせます。

 旧ユーゴスラビア連邦共和国、確かに課題も多くあったようですが、言語や信仰の異なる複数の民族が共存していたその姿は現在の世界のあり様と同じです。その連邦がプロパガンダと民族主義によって激しい内戦のうえに崩壊しました。(因みにオシム監督は内戦が最も凄惨であった「バルカンの火薬庫」サラエボの出身です。)何故隣人同士が殺しあうことになったのか。これは残念ながら世界の未来を予見しているようにも思えます。バルカン半島という一地域で、世界の未来がシュミレートされた、これは決して古臭い民族独立戦争などではない、。

 そう思うと、この映画のラストシーンの「何処にも無い、何処か懐かしい未来へ」向かおうとする人々の姿に、いっそうの切なさが醸され、現実への絶望が深まってしまいます。が、絶望的であればあるほど、希望を抱かずにはいられないのも、人間の真実。その意味では「アンダーグラウンド」は「絶望と希望」の映画と言えるでしょう。必ず観て下さい、絶対に損はしません。あ、今回のエントリは笑えない内容で、、、ご容赦ください。

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